◆ ピーク・エンドの法則とは?
心理学者ダニエル・カーネマンらの研究によって提唱された理論で、
人は出来事全体ではなく、「最も感情が動いた瞬間(ピーク)」と「終わりの印象(エンド)」で、その体験全体を評価する傾向がある
というものです。
たとえば90分の映画を観たとして——
全体の構成がまあまあでも「感動するクライマックス(ピーク)」と「美しいラストシーン(エンド)」があれば、「最高の映画だった!」と記憶に残ったりしませんか?
一方で、途中まで楽しかった旅行でも、最後にトラブル(飛行機が遅れる、財布を落とす…など)があると、「最悪の旅行だった」と感じてしまうこともあります。
つまり、人の記憶は「トータルの平均」ではなく、「ピーク」と「終わり」に大きく左右されるというわけです。

◆ 実験で実証された「記憶の偏り」
カーネマンらの有名な実験では、次のようなものがあります。
ある被験者グループに「冷たい水に手をつけてもらう」体験をしてもらい、その不快感を評価しました。
- Aの体験:60秒間、14℃の冷水に手を入れる
- Bの体験:同じ60秒に加えて、さらに30秒間、少しだけ暖かい(15℃)水に手を入れる
物理的には、Bの方が長く冷たい水に手をつけているので「不快」な時間が長いはず。でも、ほとんどの人が「Bの方がマシだった」と回答したのです。
なぜか?
最後にちょっとでも楽になる「エンド」があることで、記憶全体の印象がやわらぐからです。
◆ 日常に活かす!ピーク・エンドの使い方
1. デートや遊びの計画に
一日の中で、**「楽しいピークの時間」**をどこかに作りましょう。そして、最後の印象をよくするように工夫すると、その日全体の印象がグッと良くなります。
例:
- ピーク:一緒にアクティブな体験(動物園・脱出ゲーム・ライブなど)
- エンド:お気に入りのカフェでゆっくり感想を語り合う
→ 最後のひとときを丁寧にすると、「また会いたいな」という好印象が残ります。
2. プレゼンや会議に
プレゼンの内容を全て覚えてもらうのは難しいですが、**「印象に残る一言(ピーク)」と「締めくくりのメッセージ(エンド)」**を意識することで、強い印象を残せます。
例:
- ピーク:面白い実例やストーリーを交える
- エンド:「要するにこういうことです」とシンプルにまとめる
→ 最後の5分にこそ、心を込めましょう。
3. 子どもとの接し方に
1日の終わり、寝る前のひとときを「楽しい時間」で終わらせることが、子どもにとっても良い印象につながります。
例:
- 寝る前に絵本を読んであげる
- 「今日は何が一番楽しかった?」と一緒に振り返る
→ たとえその日がグズグズだったとしても、最後のやりとりで記憶が変わることがあります。
◆ 忘れてはいけない落とし穴
「ピーク・エンドが大事なら、それ以外は適当でいいのか?」と考えるのは早計です。
全体の体験がひどければ、ピークやエンドがあっても帳消しになることもありますし、逆にピークやエンドの印象が悪ければ、全体がどれだけ良くても「ダメな体験」に変わってしまう可能性もあります。
だからこそ、
- 全体を80点で保ちながら
- ピークで100点
- エンドで感動や納得
を目指すとバランスが取れます。
◆ まとめ:人生の印象も「ピークとエンド」で決まる?
この心理法則は、人生の出来事すべてに応用できます。
- 仕事の1日をどう終えるか?
- 長期プロジェクトの締めくくりをどう飾るか?
- 会話のラストをどうするか?
一日の終わりに「今日はまあまあだった」と思うか、「今日も良かった」と思うかは、案外最後の5分で決まるのかもしれません。
ちょっとした意識の変化で、あなたの印象はぐっと良くなるはず。
ぜひ今日から「ピーク」と「エンド」を意識してみてください。
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