タコは見た目もユニークな海の生き物ですが、体の構造も非常に興味深い特徴を持っています。そのひとつが「心臓が3つある」ということです。通常、多くの動物は1つの心臓で血液を全身に送り出しますが、タコはなぜ3つもの心臓を持っているのでしょうか?この記事では、タコの心臓の仕組みや、その生態にどのような影響を与えているのかを深掘りしていきます。
タコの3つの心臓の役割
タコの心臓は、それぞれ異なる役割を持っています。
- 全身心臓(主心臓)
- 体全体に血液を送り出す心臓。
- 人間の心臓と同じように、酸素を含んだ血液を各器官へ運ぶ役割がある。
- エラ心臓(補助心臓) × 2
- それぞれのエラに1つずつ存在する。
- 心臓が直接エラへ血液を送り、そこで酸素を取り込む。
- エラで酸素を含んだ血液が、全身心臓へ送られる。
このように、タコは「エラで酸素を取り込むための心臓」と「全身へ血液を送る心臓」を分業させることで、効率よく体内に酸素を循環させているのです。
タコの血液は青い!?
タコの血液は「青色」をしていることをご存じですか?
これは、人間や哺乳類のように**ヘモグロビン(鉄を含む)**ではなく、**ヘモシアニン(銅を含む)**という物質を利用しているからです。
- ヘモグロビン(人間):鉄が酸素と結びつくことで赤い色になる。
- ヘモシアニン(タコ):銅が酸素と結びつくことで青い色になる。
この青い血液は、低温や低酸素環境でも酸素を運びやすいという特性を持ちます。そのため、タコは深海などの酸素が少ない環境でも生息することができるのです。
タコは泳ぐと心臓が止まる!?
タコのユニークな特徴として、泳いでいるときに全身心臓が止まるというものがあります。
- タコは通常、海底を這うように移動することが多いが、逃げるときや速く移動したいときには「ジェット噴射」のように水を吐き出して泳ぐ。
- しかし、泳ぐと全身心臓が一時的に停止してしまい、エラ心臓だけが動く状態になる。
- そのため、タコは長時間泳ぐのが苦手で、なるべく海底を歩いて移動する。
これは、タコの血液がヘモシアニンを使っていることとも関係しています。ヘモシアニンはヘモグロビンより酸素を運ぶ効率が低いため、タコは泳ぎ続けるとすぐに酸素不足になってしまうのです。
タコの心臓と生態の関係
タコが3つの心臓を持つことは、彼らの生態にも大きな影響を与えています。
- 隠れるのが得意な理由
- 長時間泳ぐのが苦手なため、タコは泳いで逃げるよりも、カモフラージュ(擬態)を使って隠れる戦略をとる。
- 皮膚の色を変えたり、岩や海藻になりきる能力が発達している。
- 短命であることとの関係
- タコの寿命は種類にもよるが、一般的に1~2年と短い。
- これは、心臓が3つもあることで代謝が活発になり、短い期間でエネルギーを大量に消費するためだと考えられている。
- 深海でも生きられる理由
- 低酸素環境に強いヘモシアニンの血液と、3つの心臓による効率的な酸素循環によって、深海でも生存可能。
まとめ
タコが3つの心臓を持つ理由は、彼らの特殊な生態や環境適応と密接に関係しています。
- 全身心臓1つ、エラ心臓2つで効率よく血液を循環させる
- 青い血液(ヘモシアニン)によって低酸素環境でも生きられる
- 泳ぐと全身心臓が止まるため、基本は這って移動する
- この特性が、擬態・短命・深海適応といったタコの特徴につながっている
一見すると奇妙に思える3つの心臓ですが、タコにとっては理にかなった進化の結果なのです。
タコの生態を知ると、ますますこの不思議な生き物に興味が湧いてきますね!
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